こんばんは。1K6畳で読書に勤しむ翠です。
前回の続きで、直木賞作品シリーズです。
今回読んだのは、「木挽町のあだ討ち」です。
映画か小説どちらを先に体験するか
約半年前、
木挽町のあだ討ちの映画が公開されているとき、
なにわ男子推しの友人から長尾謙杜くん目当てで、
「観に行こう!!」と
鼻息荒く誘ってもらったのですが(笑)、
予定が合わずにいけませんでした。
その時はこの映画の原作が直木賞受賞作ということも知りませんでした。
さて、小説も映画も未体験な状態で、
どちらに先に手を出そうか、、というのが
毎度のお悩みです(笑)
多分どちらでもよいんだろうとは思うのですが、
勝手なマイルールで、
「基本的には原作を先に読む」ことにしています。
一度原作を読んでみて、ファンタジーの要素が
うまく想像できなかったり、
理解ができないかも、、という作品に当たった時だけ、
一旦原作を閉じて映像を先に観ます。
そうすると不思議と文章を読み返したときに、
情景が想像しやすいので、難しい感覚がさらっと
どこかに流れて行ってしまうんですよね。
ただし、原作に忠実な映画であればあるほど、結末を知っている小説をあとから読むのは退屈に感じてしまうことがあります。
世の中、映像化作品は原作に忠実でなければ、
「作者へのリスペクトが足りない!」と怒られがちです。
その気持ちもとてもよくわかるのですが、私としては、少しフォーカスするポイントを変えるなどして、別の作品として楽しめるような変化があったほうが好みだったりします。
ということで、今回も原作小説を先に読むことにしました。
以下ネタバレ注意|第1章で結末を疑い始めた私
小説は、芝居小屋に携わる様々な職業、背景を持った方が、各章ごとに「木挽町のあだ討ち」と己の人生を振り返ります。
「非日常を売る仕事をする人は、自分自身も現実離れした体験をしていなければいけないのかしら」と思うほど、
それぞれがドラマのような生い立ちをしています。
第一章で、菊之助のあだ討ちの様子を鮮やかに語ってくれる木戸芸者・一八。
その話を読みながら、私は早々に疑い始めました。
「これ、芝居小屋のみんなで“あだ討ち”を演じたんじゃない?」
あまりにも流れがきれいすぎる。
あえて白装束を着て、そこに返り血が飛ぶなんて、演出として出来すぎている。
ミステリーばかり読んできた弊害でしょうか。
第一章から人の話を素直に聞けません(笑)
そんな違和感を覚えながら第二章。
二代目芳澤ほたるの語り
第二章で芳澤ほたるさんが語るのは、
自らの過去と菊之助の魅力についてです。
本当に色んな人の気持ちを動かす菊之助の美しさ、真っ直ぐさというのが上手に伝わってきます。
ほたるさんは、女形の役者として、
舞台に立ちつつ衣装担当をしています。
「死んで焼かれたらみんな同じ骨になる」という
モットー(少し違うかも)を掲げながら、
世の中の理不尽さを受け入れてはねのけて生きています。
強い女性だなと心の底から思いました。
そんな、男性よりも女性としての勘や意識を持っている
ほたるさんが、
「言っていいことと悪いこと」=「言っても事実がバレないこと」を絶妙なラインで線引きして、話している気がしてなりませんでした。ここでも私の疑いは深まっていきました。
真相は思った通り✨
見出しに書いた通り、結末としては、
私が想像した通りの内容が書かれていました。
菊之助の母とつながっている人がいるという部分だけは、少し意外でしたが、そこがまたこのお話の奇跡を必然につなげる要素になっていてよかったです。
真相を疑っていた私ですが、
最後までしっかりと楽しみながら読むことができました。
第3章以降、武士が通すべき志と、身分関係なく人情や感情に揺れる菊之助の葛藤が、苦しくなるほど表現されていました。
あまり歴史に詳しくない私ですが、この作品を読んでいると、武士としての「こうあるべき」に縛られて生きることの窮屈さを感じます。
現代では、自分の考えや気持ちを世界に向けて簡単に発信できます。それと比べると、身分や立場によって振る舞い方まで決められてしまう世界は、私にはとても息苦しく感じられました。
立場上、よく懐いていた家人を殺さなければいけない。
矛盾と理不尽に大いにさらされて、心が壊れてしまいそうですよね、、。
「気が触れた」という表現が小説の中で出てきましたが、
本当に、頭がおかしくなってしまってもしょうがない、
「私は一体何のために生きているのだろう?」と自問自答したくなるような日々を過ごしたんだろうな、、。
「仇を討つ」か「武士としての自分を捨てる」の2択に迫られた、真面目過ぎる彼の背中に、そっと第3の道を提示してあげた森田座のみなさんが、とても暖かくて、読んでいて安心感がありました。
読了後、映画も観てみる
小説自体は、そんなに分厚いものでもなかったので、平日に3日間くらいで読了できました。
今回は、そのまま休日に映画も観てみました。正直、1人ずつの語りを映像化するのは難しいのでは?と思っていたので、少しずつ設定をずらしているところは、「なるほどな」と思いました。
「映像化するなら映像化に合った変化を」と思う私としては、かなり楽しい作品でした。
映画のほうが、事実を疑っている加瀬さん(柄本佑さん)に対して、森田座のみなさんが必死に嘘がバレないように繕っているのが前面に出ており、「何か裏がある」ということが分かりやすくなっていました。
また、それぞれの登場人物の過去の経験や葛藤がかなり省略されていたので、じっくり掘り下げて物語の深みを感じられるのは原作小説の方でした。
逆に映画の良さとしては、あだ討ちのシーンの、
菊之助の美しさがもうイメージそのものなところが、
拍手って感じでした(笑)
赤というより、少し朱に近いような派手な色の振袖を
女性より女性らしく着こなす菊之助が、
とにかく美しくて、これは映像化されて良かったと心から思いました。
このあだ討ちを実際にみた町人たちは、
「芝居よりすごいものを見てしまった」という、ちょっと悔しいような気持ち。
滅多に見られないものを見たという満足感。
そして、「実際に人が亡くなるというのは、こういうことなのか」という怖さ。
いろんな感情を抱えながら家に帰ったんだろうなぁ。
私も町人の一人として、あの日の木挽町に紛れ込んでみたくなりました。

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