最近、どこの本屋さんに行っても目に入るのが『成瀬は天下をとりにいく』です。
黒髪の女性のまっすぐな眼差しが印象的で、
平積みされた棚の前を通るたびに視線を奪われていました。
そんなに何度も出会うなら、きっと何かの縁だろうと思い、読んでみることにしました。
物語の冒頭、成瀬が「私、200歳まで生きようと思う」と言う場面があります。
その一言を読んだとき、思わず笑ってしまいました。
なぜなら、高校生のころの私も似たようなことを言っていたからです。
1990年代後半に生まれた私がもし100歳を超えて生きられたら、
1990年代、2000年代、2100年代――三つの世紀を跨いで生きたことになるんです。
国語の授業中にふと気づいて、それ以来、なんとなくの人生目標になりました。
父方も母方も健康長寿の家系で、私自身も丈夫なほうなので、
意外と現実的な目標かもしれないな、なんて思っています。
この作品は、読んでいて胸が熱くなるようなドラマチックさがあるわけではありません。
けれど、10代特有の“無駄に思えることにも全力で向き合う姿”が
静かに心に残ります。
そのまっすぐさを見ているうちに、
気づけば「がんばれ、成瀬」と心の中で声をかけていました。
成瀬は、挑戦することに物おじしません。
100ある挑戦のうち、1つでもうまくいけばいい。
そんなスタンスを、最初から自然に身につけているように見えます。
それに、彼女は自分のまわりにいる人たちへの感謝も忘れません。
どんなに注目されても、“自分は天才だ”なんて思い上がることがない。
支えてくれる友人たちの存在をちゃんとわかっていて、
その関係を大切にしている姿が印象的でした。
そういう部分に、彼女の天才さと親しみやすさが同居しているように感じます。
教室では少し浮いた存在かもしれませんが、
もし彼女が大人になって、いろんな世代や価値観の人たちが集まる場所に身を置いたら、
きっともっと楽しい仲間に出会って、
さらに大きな挑戦を続けていくのだろうと思いました。
大人になると、挑戦をためらうことが増えます。
失敗したくない、恥をかきたくない、そんな気持ちが前に出てしまうからです。
でも私は、どちらかというと「やる」と決めたらすぐ動いてしまうタイプです。
思い立った翌日には行動していて、
「もう始めたの?」と驚かれることもしばしばあります。
自分でも、あの勢いはどこから来るのかと思うことがありますが、
きっと“考えるより先に動く方が、自分らしい”と知っているからだと思います。
だからこそ、成瀬の姿に惹かれました。
迷いがなくて、周りの評価にもとらわれない。
挑戦することそのものを楽しめる人。
そんな彼女を見ていると、
挑戦の意味を難しく考えすぎていた自分に気づかされます。
うまくいかなくてもいい。
やってみたいと思った瞬間に動く。
それを繰り返すことで、いつの間にか“天下をとる”くらいの景色に
たどり着けるのかもしれません。


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